子供の頃

昨今は、田植えの苗は農家で作らず、田植え機用に箱に入った苗を農協から購入するらしい。昔はまず種から自作だった。去年の籾を種として残し、その種を春になると水につけて、芽が出るのを待つ。まず苗代を作り水につけておいた種を蒔く。やがて芽がでて苗代で大きくなった苗を取って、束にして田植えをする。

ある年、我が家では大失敗をした事があった。

早くに父が亡くなったので、祖父が万事を賄ってくれていたが、その祖父も数年して亡くなった。何もせずに育った母(養女だった)は慣れない百姓をする事になり、今から思い返せば、さぞや難儀した事だろう。

苗代に籾を蒔いてから、上に油紙みたいなのをかぶせるんだけど、その年は風の強い年だったのか、紙がはがれて、隣の苗代の餅米の種がうるち米の種と混ざってしまい、それを知らずに(苗では餅かうるちか判らない)普通に田植えをして、苗は大きくなり稲刈り時期になった。流石にそのころになれば区別がつくが、もう手遅れ・・どころか取返しがつかない。

米は自家消費分だけ残して農協で品質検査を受け買って貰う。もちろん余分に残して、ヤミ米として売る。所が我が家のその年のコメは餅とうるちが混ざってしまい、等級が貰えず等外となり、最安値だった。

所が良い事もあるもんで、餅米が混ざったので、その米は美味しいコメとなり、ヤミ米屋さんが「あんたんとこのコメは評判がいい」そう言ってよく買ってくれた。

今のように美味しい品種が一杯ある訳じゃないので、その頃はそれで充分美味しかったかもしれない。翌年からは混ざらないように、ちゃんと作った。